プラトン哲学

プラトンとは?名言、生涯、著書、イデア論までまとめて紹介【哲学】

プラトンとは

プラトン(紀元前427年〜紀元前347年)は古代ギリシア時代の哲学者です。

ソクラテスの1番弟子、アリストテレス>の師でもあります。

ソクラテス、プラトン、アリストテレスはギリシアの3大哲学者として有名です。

「生きるとは何か」と最初に考え始めた師匠ソクラテスの思想を引き継ぎ、「正義とは、美とは、善とは」といった問題に正面から向き合い、イデア論を完成させた人物です。

師匠のソクラテスは自身の著作を残しませんでしたが、プラトンがソクラテスの思想を著作にして後世に残しました。

プラトンがいなければ、ソクラテスはこんなに有名にはなっていなかったでしょう。

イデア論のほかにも哲学者が政治を行うことを理想とする「哲人政治」を説きました。

また、アテネにアカデメイアという学問の場を開き、弟子たちが議論しあったり、研究しあいながら、思想を発展させていく 場を提供しました。

このアカデメイアはその後、約900年存続しました。

プラトンの著書

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プラトンの著書はその大半を対話形式のものが占めます。つまり、人と人との会話の中で議論が進んでいきます。

プラトンの著作はその内容、文体から「初期、中期、後期」に分けられます

以下にプラトンの対話篇作品一覧を記載します。

それぞれの本の内容を知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
【参考記事】プラトンの全著書一覧 / 代表作からおすすめまで各作品の内容を紹介!

初期作品

ソクラテスが主人公の対話作品。ソクラテスの思想を示すものと考えられています。

「エウテュフロン」「ソクラテスの弁明」「クリトン」「カルミデス」「ラケス」「リュシス」「イオン」「メネクセノス」「プロタゴラス」「ゴルギアス」「ヒッピアス大」「ヒッピアス小」「エウテュデモス」「メノン」

中期作品

語り手はソクラテスですが、プラトン自身の思想が語られていると考えられています。プラトンの代表作が属します。

「パイドン」「饗宴」「ポリティア(国家)」「クラテュロス」「パイドロス」「パルメニデス」「テアイテトス」

後期作品

初期、中期作品とは明らかに文体的違う6作品。

「ソフィスト」「政治家(ポリティコス)」「ピレボス」「ティマイオス」「クリティアス」「法律」

偽作の疑い

「アルキビアデス第一」「アルキビアデス第二」「ヒッパルコス」「恋敵」「テアゲス」「クレイトフォン」「ミノス」「エピノミス」「書簡集」

プラトンの生涯

プラトン、アテネに誕生

紀元前427年にプラトンがアテネに誕生。

父アリストン、母ペリクティオネ。両親ともにアテナイの名門出身。

ペロポネソス戦争終結

紀元前404年。プラトンが23歳の時にアテナイがスパルタに降伏し、ペロポネソス戦争が終結。

敗戦後、親スパルタ派30人による独裁政権が樹立される。

ソクラテスの死刑判決

紀元前401年。プラトン26歳。

ソクラテスが不敬神の罪で告発され、死刑判決を受ける。

政治家の道を志していたプラトンは30人独裁政権、ソクラテスの死刑から、政治に絶望し、政治家の道を捨て、哲学の道に進むことを決意する。

アカデメイア設立

紀元前387年。プラトン40歳。

アテネに研究教育機関アカデメイアを設立。弟子たちと共に議論したり、研究したりする場となる。

また、シチリア島を訪問し、青年ディオンと出会い、以後密接な関係が続く。

シチリア島の王を教育

紀元前367年。プラトン60歳。

シチリア島でディオニュシオス2世が即位。ディオンはプラトンにディオニュシオス2世教育を依頼する。

しかし、政争が起こり、ディオンが国外追放。プラトンも1年あまり監禁される。

また、同時期にアリストテレスが17歳でアカデメイアに入学し、弟子となる。

再度シチリア島へ

紀元前361年。プラトン66歳。

ディオニュシオス2世の要請で再び、シチリア島へ。しかし関係が悪化し、再度監禁される。翌年、帰国。

プラトン死去

紀元前347年。プラトン80歳の時、死去。

プラトンの名言

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プラトンの思想を紹介する前に名言をいくつか紹介します。

プラトンの人柄が感じられるのではないでしょうか。彼は実は恋愛哲学でも有名です。

愛に触れると誰でも詩人になる。

恋という狂気こそは、まさにこよなき幸いのために、神々から授けられる。

魂には眼がある。それによってのみ、真理を見ることができる。

時は、未来永劫の幻影なり。

徳は一種の健康であり、美であり、魂のよいあり方なり。それに反し、悪徳は病気であり、醜であり、弱さなり。

プラトンの思想

プラトンの思想として有名なものにイデア論魂の三分説があります。

イデア論

プラトンが「正義とは何か? 善とは何か?美とは何か?」と考えていく中で、辿り着いたのがイデア論<です。 正義、善、美といった抽象的な概念は目に見えず、しかもその人それぞれで捉え方もマチマチです。 例えば、「美」について考えてみましょう。

  • A国:痩せている女性が美しい
  • B国:太っている女性が美しい

このように「美」の概念はその国によって異なりますし、またその国民一人ひとりでも変わってくるはずです。

誰にでも当てはまるような絶対的な「美」は存在しないように思われます。

絶対的な「善」「美」「正義」を求めて

それでもプラトンは絶対的な「善」「美」「正義」があるはずだと思考を重ねます。 そしてあることに気づきます。

何を美しいと思うかは異なるかもしれないが、みんな「美しい」という感覚は持っているではないかと。

なぜ人は「美しい」といった概念を持っているのでしょうか? 美しさは教えられて身につくものではありません。

何を美しいと思うかは育ってきた環境に影響を受けると考えられますが、「美しい」と思う心自体は人から教えられるものではありません。

プラトンはその理由を以下のように述べます。

「私たちは生まれる前に、本物の『善』『美』『正義』を見て知っているため、この世界でも『善』『美』『正義』を感じることができる。」

これは空想の世界の話に聞こえるかもしれませんが、たしかになぜ私たちが物事を美しいと感じるかは、生まれる前からその感覚を持っていたという風に捉える以外に方法はなさそうです。

プラトンはこの本物の「善」「美」「正義」を「イデア」と呼びます。

そしてこの世界とは別にイデアの世界があると考えました。

私たちは生まれる前にそのイデアの世界を見て知っているから、この世界でもイデアを想像するのだと。

このように「善」「美」「正義」以外にも、実際には見えないけれど、みんなが共通して思い浮かべることができる何かを「イデア」と呼び、理想の姿としました

洞窟の比喩

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プラトンの代表作の一つ「国家」の中には、イデア論を象徴する有名な比喩が登場します。

それが「洞窟の比喩」です。

  • 生まれた時から、洞窟の中の椅子に縛られている人がいる。
  • 手足を縛られているので、動くことはもちろんできない。
  • 首も縛られているので、後ろを振り向くこともできず、前しか見えない。
  • その人の後ろに明かりが灯されていて、明かりとその人の間には椅子やテーブルなど様々な物が置かれている。
  • その人からは椅子やテーブルは見えず、壁に映った影絵だけが見えている。

その人からしたら、それが世界の全てであり、その影絵が椅子やテーブルそのものに思われるでしょう。

しかし、その影絵はもちろん本物ではありません。 その人が本物の椅子やテーブルを見ようと振り向くと、はじめはあまりの明るさに目を背けてしまうことになるでしょう。

しかし、目が慣れてきて、一度本物の椅子やテーブルを見たなら、もう洞窟の中に戻ろうとは思わないでしょう。

これが有名な洞窟の比喩です。

もちろん、本物の椅子やテーブルが「イデア」を、影絵が「私たちが今生きている世界で見ているもの」を意味します。

影絵に惑わされることなく、知性によって、イデアを求めなければならないとプラトンはいいます。

最高のイデア

数あるイデアの中でも最も位の高いイデアは「善のイデア」であるとプラトンは言います。

イデアに序列なんてあるのかと思われるかもしれませんが、これはイデアの性質から説明できます。

イデアとは「あるべき姿」のことです。この「あるべき姿」という概念が「善のイデア」にあたります。

「あるべき姿」という概念をみんなが共有して理解できるからこそ、イデアは存在することができます。

つまり、どのイデアも「善のイデア」を含んでいると言えます。

そういった点から、プラトンは「善のイデア」こそ最高のイデアだと言ったのです。

太陽の比喩

プラトンの代表作の一つ「国家」の中で、善のイデアの重要性を示す比喩が登場します。

それが「太陽の比喩」です。

この世界は太陽の光によって照らされている。太陽の光が無ければ、私たちは何も見ることができない。善のイデアは太陽のようなものだ。善のイデアがなければ、他のイデアを見ることができない。

つまり善のイデアは他のイデアの存在根拠となるイデアであり、イデアのイデアと言えるでしょう。

魂の三分説

それでは人間はどのように「善」を達成するのでしょう。

プラトンは人間には魂(善を目指す個体)があると言います。

そしてその魂は3つに分割できると続けます。

  • 理性→善を目指して進もうとするもの
  • 意志→理性に活力を与えるもの
  • 欲望→理性を邪魔するもの

そしてこれは「2頭の馬を操る人」という例で説明されています。

  • 理性→馬を操る人
  • 意志→従順な馬
  • 欲望→暴れる馬

「理性」が上手く「意志」と「欲望」をコントロールすることで善に辿り着くことができます。

四元徳

理性、意志、欲望はそれぞれ持つべき性質(徳)があるといいます。

  • 理性→知恵という徳を持つ
  • 意志→勇気という徳を持つ
  • 欲望→節制という徳を持つ
  • この3つのバランスをとるのは正義という徳

この4つをまとめて「四元徳」と呼びます

善を目指すために、欲望は節制されなければならないし、意志は勇気を持たなければならないし、理性は何が善かという知恵を持たなければなりません。

この「四元徳」を持って、魂をより善くするように努めることが人間が生きるということだとプラトンは説きました。

まとめ

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以上、プラトンのまとめでした。プラトンが扱った課題は政治学、科学、宗教、倫理学、天文学、芸術、愛など様々な分野にわたり、それぞれの分野で面白い考察をしています。

全ての分野に共通する核となる思想はイデア論ですが、イデア論を簡単に頭に入れた上でそれぞれの著書を読んでみると新しい発見があるかもしれません。

プラトンは実は恋愛哲学でも有名で、著書「饗宴」での愛の理論は現在の常識とは違っていて、とても刺激的でおすすめです。

【参考記事】運命の人はいない!?哲学的に恋愛を考える【プラトン恋愛論】